バントについて

目次

私自身小学校時代に少年野球チームに所属していましたが、その当時“バント”などやったことはありませんでした。
また、よそのチームがバントする場面を見たこともありませんでした。
ところが、最近ではジュニア(小学4年以下)の試合においてでさえ、送りバントやスクイズをたまに見かけます。
それほど、今の少年野球でバントは重要視されています。
かくいう私が自チームで目指す野球は、(1)先頭バッターがフォアボールで出塁する、(2)バントの構えでバッテリーを揺さぶっている間に2塁に盗塁する、(3)送りバントで1死3塁にする、(4)スクイズで1点取る…というノーヒットで1点を取る野球です。
この点の取られ方は、守備側にとって本当に堪えます。
上部大会に出場すると、素晴らしいピッチャーが次から次へと出てきます。
そんな時、小学生がそうそう打てるものではありません。
接戦をモノにするには、1点を確実に取りにいく細かい野球がどうしても必要なのです。

バント練習の必要性

我がチームでは、あらゆる練習の中でバント練習に最も時間を費やします。それはなぜでしょうか?
チーム戦略的にバントが必要であるということは先に述べましたが、それ以上に、“バント練習には、バッティングで必要な様々なエッセンスが詰まっているから”というのがその答えです。
バッティングの基本は、“ボールをよく見極める”ことです。
バットがボールに当たらなければ話になりませんから、自分のストライクゾーンを感覚的に身につけ、バットの芯でしっかりとボールを捕まえる必要があります。
その過程で、ボール球に手を出すという行為は、相手ピッチャーを助けるだけでなく、自分がヒットを打つ確率も著しく低下させます。
このため、我がチームでのバントは“ストライクバント”(ストライクのみバントする。ボール球はバットを引いて見送る。)を徹底しています。
そして、この練習は選球眼を鍛えることにも直結するのです。
バッティング・ピッチャーとして私がわざと投げるボール球を、きちんと“ボール”とジャッジしてバットを引く練習を繰り返し行います。
また、ストライクの球に対しては、きちんとバットの芯に当てて転がします。
この練習を積み重ね、6年生の初夏頃になるとバントの技術自体がかなり上達してくるので、“わざと芯をちょっとはずして球の勢いを殺す”バントをする子も出てきます。
ここまでくればもう“バットの芯”が意識できているので、バント成功率が高くなっているだけでなく、打率も向上しているというわけです。

バントの種類

バントには大きく(1)送りバント(2)セーフティーバント(3)スクイズバントの3種類があります。
どれも現在の少年野球で多く採用される戦術なので、個別に説明します。

送りバント

無死1塁、無死1・2塁、無死2塁の場合、または1死の場合で、どうしても1点が欲しい場面において、走者を次の塁に進めるために打者がアウトになる覚悟で転がすバントの事を指します。
別名“犠牲バント”とも呼ばれ、スコアブックでは“犠打”として記録されます。
送りバントをする場合、走者1塁の場合は1塁方向へ、2塁または1・2塁の場合は3塁方向へバントするのが基本的なセオリーとなりますが、ピッチャーの利き腕によっても転がすべき方向は異なります。
右ピッチャーに対しては3塁側へ、左ピッチャーに対しては1塁側へ転がすことがよいと言われています。
これは、ピッチャーが投げ終わった後にマウンドを駆け下りる“駆け下り易さ”に起因します。
人間工学の観点から、右ピッチャーは投球後に1塁方向に体が流れるとされているので、3塁方面への対応とは逆になることからエラーや暴投を誘発するのです。
左ピッチャーについてはその逆の理論です。
もっとも最近は少年野球においても1点勝負の場面で“バントシフト”を敷くことがあり、サードやファーストが猛烈にダッシュしてくる事も想定されますので、バッターは内野手の守備位置も勘案して最終的に転がす方向を決めます。
次にバントの姿勢についてですが、送りバントはセーフティーバントやスクイズと違い、バントすることが相手にバレたとしても問題ありません。
そのため、投球前からバッターボックス内できちんと基本姿勢をとります。
基本姿勢には、オープンスタンスとスクエアスタンス(クローズドスタンス)があります。
オープンスタンスの場合はピッチャーと正対しているので、バントすることが必須です。
“バスター”という“バントの構えをしておきながら、実はヒッティングする”という作戦がありますが、この場合はスクエアに構えることが必要です。
送りバントで最も注意すべき点は、バットの角度です。
バントで一番まずいとされるスタイルは、バットに当てるタイミングで“ヘッドが下がる”ことです。
下がったヘッドから放たれたバントの打球は、力なくファイルチップとなるか、投球の勢いに負けてファウルゾーンに逸れてしまうかのどちらかです。
フェアグラウンドに転がすためにはヘッドを水平よりやや上げて、確実にアジャストする必要があります。
まず、目の前でバットを横にして構えます。
この時、絶対にヘッドが下がらないようにします。
そして膝を軽く曲げて、自分のストライクゾーンの高めいっぱいにバットの先端がくるように調整します。
こうすれば、この時の目の高さより高い球はボールであると判断できるので、ストライクバントの場合はボール球を容易に見逃せます。
低めに来たボールにはヘッドを下げたり、腕を下げたりするのではなく、バットの角度と目の位置関係は変えずに、膝だけを上下させてバントします。
この場合における低めのゾーンに対する見極めは、練習で体に覚えこませるしかありません。
送りバントで注意すべきもう一つの点は、“自分はセーフにならなくてよい”ということです。
送りバントの経験が浅いうちは、“自分もセーフになった方がチームとしてもいいだろう”と勝手に考えがちです。
その結果、きちんとバットに当てる前に1塁に向かって走る意識が出すぎてしまい、バント自体が出来ずに空振りになったり、当たったけれども小フライになってダブルプレーを食ったりします。
監督は“お前はアウトになってもいいから何としてもランナーを進めてくれ”という意図でサインを出しているのですから、選手個々がこの意図を理解してくれないと、送りバントはチームプレーとして成立しません。

セーフティーバント

足の速い子には、無条件でこの練習をさせます。
1塁線や3塁線にバントで転がして、自慢の足の速さを生かして内野安打を狙うという作戦です。
小学生はクリーンヒットをそう簡単に打てませんから、少しでも出塁する可能性が高い作戦として多用します。
これにはあまり基本の形はありませんが、内野の守備位置を確認しながら、ケースバイケースで転がす練習を繰り返して行います。
注意しなければならないのは、早くスタートを切りたいあまり、バッターボックスから足がはみ出してしまいアウトになるケースがあるので、チーム練習の時から注意してください。

スクイズバント

無死または1死で3塁にランナーがいる場合に、小学生が最も確実に点を取る作戦がスクイズです。
厳密には2種類のスクイズがあり、スーサイドスクイズ(一般的なスクイズのこと。以降“スクイズ”と表記)とセーフティスクイズがあります。
スクイズのサインが出たら、3塁走者は投球と同時にホームに突っ込みます。
打者はバントすることにより自分はアウトになりますが、1打点をあげることになります。
スクイズの場合、打者はどんなことをしてでもバットに当てる必要があります。
なぜなら、空振りした場合、飛び出した3塁ランナーが3本間で侠殺されることになるからです。
サインミスも許されません。
ミスの中には、見落としや勘違いも含みますが、せっかく3塁まですすめたランナーが一瞬のうちにアウトとなってしまうので致命的です。
また、スクイズを失敗すると、単に得点チャンスを逃しただけでなく、チーム全体の雰囲気が悪くなります。
スクイズのサインを見破られ、バッテリーに外される(ウエスト)こともありますが、その時に流れる空気の悪さは独特なものです。
これは指揮官のミスなので、サインを出した監督のはらわたが煮えたぎり、その匂いがベンチやスタンドの空気を悪くしているのです。
最近では、小学生でもセーフティスクイズを仕掛けてくるチームがあります。
打者がバントを行ない、確実に転がったことを見極めてから、三塁走者がスタートをするスクイズです。
リスクは少ないですが、かなり多くの練習量が必要なので、小学生のチーム戦略としてはあまりおすすめできません。

まとめ

バント職人”と言う言葉があります。
バントは、その技術の中で、職人のような正確性や丁寧さも求められるからだと私は理解しています。
“絶対に送りバントを失敗できない場面”というのがプロ野球でもあります。
それを涼しい顔で成功させる職人のプレーには、“男のロマン”すら感じます。
ホームランをかっ飛ばすだけが野球ではありません。
バント練習は家庭でも出来ますので、バッティング・ピッチャーとしてお子さんにビシビシ投げてあげましょう。
貴方が気付いた時、お子さんはチームで“バント職人”と呼ばれているかもしれませんよ。