新チーム編成直後の練習への取り組み方

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記事の目次

少年野球ではどのチームも、6年生のある時期になると卒団になります。一般的には、夏休み前までとか秋の大会で負けるまで…というチームが多いでしょうか。
“新チーム”。いい響きです。この先に透けて見えるのは、一面バラ色の光景でしょう。

6年生の人数が多かったチームは、特にこの一年における5年生の出番は少なかったはずで、“ようやく自分たちが最高学年だ”という意識や、“僕たちの代のキャプテンは誰なんだろう?”という気持ちで、落ち着かないまま新チームの初練習を迎えることになりますが、気分とすれば、プロ野球選手がキャンプインを迎える初日の心境でしょうか。

ここでは、私のチームにおける“新チーム始動時の練習イメージ”をお話したいと思います。

チームの目標を決める

新チーム発足時における初練習の前、毎年子供たちと親御さんに対して、私はこう宣言します。
「ポジション決めもレギュラー争いも、全て白紙状態です。いままでの実績は、全て関係ありません。」
新しいチームとしての船出となるので、指導者も子供たちも親御さんたちも気持ちをリセットして、また新たな気持ちで少年野球に対する取り組みを始めましょう…というセレモニーです。

その後、グランドに入ったらまず子供たちを集めて、チームとしての“今年の目標”を立てさせます。
ここでは30分ほど時間を与え、“子供たち同士”の議論を経た上で“子供たちに”目標を決めさせます。
それは“春秋の地区大会優勝”であったり、“XX大会ベスト4”であったりするのですが、個人の目標になってしまったり、到底叶わない“夢”のような目標を立てないように、途中でアドバイスをしながら議論を進めさせます。

ここでは、“監督・コーチが決めた目標”ではなく“子供たちが自分たちで決めた、チームの目標”というところがポイントとなります。
これから1年間続けていく厳しい練習は、“チームのみんなで決めた目標”を達成するためのものであり、“監督・コーチが決めた目標”に対するものではない。だから、みんなでその目標を達成するために一生懸命に練習する、という理論付け・意識付けがまず必要なのです。

各自の能力を認識する

目標も決まったので、“いよいよポジション決めか”と思われるでしょうが、我がチームではその前にやることがあります。
子供たちひとりひとりに、“その時点における自分の身体能力を再認識させる”というステップが待っています。

まず、ベースランニングのスピード計測を行います。
一人のコーチがストップウォッチでダイヤモンド1周のタイムを計りマイクで読み上げ、別のコーチが記録を書きとめていきます。
ここでマイク発表するのには理由があり、子供たちだけでなく、観ている保護者にも“我が子の身体能力がチーム内でどのような立ち位置にいるのか”を自覚してもらう効果を狙っています。
この自覚を促すことで、“うちの子はあんなに巧いのに何でレギュラーじゃないの”といった言葉を吐く、モンスターペアレントの増殖を抑える効果を狙っています。

この計測については、毎年このタイミングと夏休みが始まる時に行っているので、前回数値との比較も出来ます。
成長期の子供たちなので大抵の子はスピードアップしていますが、中には不摂生の結果タイムが落ちている子もいるので、その場合は親御さんも含めて原因分析を行い、後日の改善計画提出を求めます。

ベースランニング計測が終わったら、次は遠投です。
常日頃から練習の中で投げ方や肩を強くするキャッチボール方法を指導しているので、その成果を見せてもらいます。

こちらも前回の結果があるので、その比較を行いながら今後の練習プラン立案に役立てます。
私のチームで実施した過去の計測において、遠投の数値が前回を下回った子供は今まで一人もいませんが、仮に進歩のない子、または数値の下がった子がいたとすれば、整形外科で検査してもらったほうがいいでしょう。
日々進歩するはずのこの時期に数字が落ちているということは、肩や肘に何か問題があることを疑うべきだからです。

ポジションを決める

ようやくポジション決めです。
キャッチャーについては既に長期計画で育てているので、それ以外の全員を3塁付近に集合させ、一人一人に対してノックを打っていき1塁に送球させます。
ここではグローブ捌き、前や横へのフットワーク、1塁への正確な送球というポイントでチェックをして“ふるい”にかけます。
簡単に言うと、内野手としての適性が低い子を外野手に振り分けるという作業です。

この先は内野手と外野手とに別れて、それぞれ別のコーチからノックを受けてさらに細かいポジション決めを行います。
ここでは先ほどのステップで計測した、身体能力のデータも加味して大まかな守備位置を決めていきます。
遠投の数値が高い子は速い球を投げる能力があるので、ピッチャー・ショート・外野手が有力です。
足の速い子は、外野手の中でも守備範囲が広いセンターが有力です。
足の遅い子はライトかファーストが有力ですが、左利きなのでファーストしか守れない子などがいる場合は、状況を勘案した上で総合的に決めていきます。

その他、我々指導者が練習中に気づかなかった能力(自宅でこつこつと練習している成果)が、この計測の時に数値として発見されたりもします。
子供たちの隠れた努力を見逃さないように様々な網を張るのも、指導者の重要な役割なのです。

まとめ

新チームでは過去と決別し、今まで守っていたポジションも打順も一切関係ない…ということがご理解いただけたでしょうか?
ポジションが変われば、背番号も変わります。
打順が変われば気分も変わり、野球に対する接し方・考え方も変わるかもしれません。
ひょっとすると、貴方の息子さんは新チームのキャプテンに任命されるかもしれませんよ。

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