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小林寛和
財団法人スポーツ医・科学研究所

vol.1   ケガや故障をしないで元気に野球をたのしもう!

 リトルリーガーのみなさんこんにちは。理学療法士の小林です。わたしは、ケガや故障をしてスポーツができなくなってしまったスポーツ選手を、ふたたびスポーツができるようにする治療や、リハビリテーションを仕事にしています。

 「スポーツにケガや故障はつきもの」「野球をやっていたら少しぐらいのケガや故障はあたりまえ」「ケガや故障をくりかえして、強いからだができる」…。このような言葉を、みなさんも聞いたことがあると思います。本当でしょうか? 少し前の時代には、スポーツ選手のケガや故障について、お医者さんやわれわれ理学療法士でもわからないことが多く、ケガや故障をふせぐための方法もあまりわかっていませんでした。そのころは「スポーツにケガや故障はつきもの」というのもしようがなかったのかもしれません。

 しかし、いまはスポーツ選手のケガや故障について、かなり多くのことがわかるようになり、「どうしたらケガや故障をしないか?」という研究も進んできています。

 この連載は、みなさんがケガや故障をしないで元気に練習をして、野球を楽しんで上手になってもらうことを願いながら、ふだん気をつけなければならないことや、やってもらいたいことを、お医書さんや専門のスタッフが説明します。

【スポーツによるケガや故障】

 スポーツによって起きてしまうケガや故障を、専門的には「スポーツ外傷」といいます。スポーツ外傷は2つにわけられて、いわゆるケガを「急性外傷(きゅうせいがいしょう)」といい、故障を「慢性外傷(まんせいがいしょう)」といいます。急性外傷は、強い力がからだにかかって起きてしまうもので、骨が折れてしまう骨折(こっせつ)、関節がはずれてしまう脱臼(だっきゅう)、強く関節をひねってしまう捻挫(ねんざ)などがあります。慢性外傷は、何回も何回もくりかえして負担ががからだにかかり、だんだんと痛みが出てきてしまうようなものです。みなさんがなりやすい野球肩(やきゅうかた)野球肘(やきゅうひじ)、オスグッド氏病などは慢性外傷になります。

【スポーツ外傷が起きてしまう原因】

 では、スポーツ外傷が起きてしまう原因としてはどのようなものがあるのでしょうか? おもな原因は、【図1】に書いてあるように「個体要因」、「環境要因」、「トレーニング要因」の3つになります。

 「個体要因」とは、みなさんのからだつきや体力の特徴が原因となるものです。からだつきとしては姿勢、足のかたち、身長、体脂肪の問題などがあげられます。体力としては柔軟性、筋力、持久力、フォームの問題などがあげられます。

 「環境要因」としては、練習を行うときの気温、天候、場所や、練習を行うときに使う道具の問題などがあげられます。寒い日に、ウォーミングアップをせずに、いきなリキャッチボールや素振りを始めていませんか? 底がすり減ったくつをはいて走り込みなどをしていませんか?一見小さな問題に思えることでも、何日も続けてしまうことにより、スポーツ外傷につながってしまいます。

 「トレーニング要因」としては、練習の方法や練習量などの問題があげられます。みなさんも知っているようにキツイ練習を長い時間続けたら、スポーツ外傷が起きやすくなってしまいます。

 ここで、みなさん考えてみてください。3つの要因のうち、スポーツ外傷が起きてしまうことにいちばん関係してしまうのはどの要因でしょうか? ヒント! 同じ場所で同じ練習をしていても、ケガや故障をする選手もいれば、しない選手もいますよね。そうです。スポーツ外傷が起きてしまうのは「個体要因」、つまりみなさんのからだつきや体力の問題がもっとも関係してしまうのです。なかでも、もし「フォームの問題」があると、かなりの確率でスポーツ外傷が起きやすくなってしまいます。スポーツ外傷を防ぐための私の指導経験からも、フォームの問題に注意し、またふだんのコンディショニングを正しく行うことにより、かなりのスポーツ外傷を防ぐことができます。

【図1】スポーツ外傷(急性外傷・慢性外傷)の発生に関係する要因
(1)個体要因
(選手の体つきや体力に関するもの)
足のかたち、姿勢、筋力が弱い、持久力がない、体がだるい、関節がゆるい、技術が未熟、フォームが悪い 他
(2)環境要因
(スポーツを行う環境や使用用具に関するもの)
季節や天候(雨降り、寒い)、路面や床面の状態(硬さ、デコボコ、すべる、強い摩擦など)、くつや道具の状態 他
(3)トレーニング要因
(スポーツを行う質や量に関するもの)
運動の種類および方法、運動の負担量、競技種目およびポジション 他
参考図書:ファンクショナル・エクササイズ(川野哲英著・ブックハウス この本はスポーツ外傷の発生に関わる要因と対策が詳しく記されており、指導者や保護者の方にたいへん参考になる)

 

【スポーツ外傷につながりやすいフォームの問題】

 もしフォームに問題があると、からだの一部分に負担がかかりやすくなってしまいます。野球のプレーで必要になる投球や、ランニングのフォームに問題があり、これを何回も何回もくりかえしてしまうことで、とくに慢性外傷が起きやすくなってしまいます。みなさんくらいの年齢の選手に多く見られるフォームの問題をあげておきます。

 投球では、肩や肘をいためてしまう選手に【図2】のような「肘さがり」のフォームが多く見られます。いきおいをつけて腕を振ろうとしたとき【図2】のようになってしまうと、肩や肘にかなりの負担がかかってしまうのです。

 ランニングでは、膝をいためてしまう選手に【図3】のような「ニーイン」、つまり膝が内側に入ってしまうフォームが多く見られます。片足でグッと体重を受けようとしたときに、【図3】のようになってしまうと、膝にはかなりの負担がかかってしまいます。

 どうしてフォームの問題が起こってしまうのだろうか? からだに負担がかかって、スポーツ外傷が起きやすくなってしまうフォームの問題を直すには、どんなことに気をつけていけばいいのだろうか? たくさんの「なぜ?」という疑問を持ってほしいと思います。くわしい内容を、これからの連載で勉強していきましょう。また、スポーツ外傷が起きてしまったら、少しのあいだ、大好きな野球ができなくなってしまいます。元気なからだで、せいいっぱい野球の練習にとりくんでください。

 



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