vol.2 《ヒザ・その1》知っておきたいヒザのしくみとリトルリーガーに起きやすいケガ
【ヒザのメカニズム】
●成長期の特徴
・骨【図A】‥骨の端には、骨がどんどん伸びて長くなる骨端線(成長軟骨板)と骨端核があります。そこで骨の成長軟骨細胞が大きくなり、骨も強く大きくなっていきます。しかしこの骨端線は外力によって傷ついたり、ずれたりする可能性があり、また骨端核が原因不明の血行障害により壊死(えし・骨が腐ること)を起こすこともあります。その異常を放置しておくと骨の変形が残り、成長障害を起こすことがあります。この骨端部に対して長管骨は、自家矯正力がおうせいで、癒合力も大変強くなっています。
・軟骨=ヒザ関節には、厚くて柔らかい軟骨が表面にかぶさっており、関節が動くときになめらかに滑ります。軟骨がいたむと滑りがスムーズに行われなくなり、痛みや違和感、異音を発することもあります。
・筋肉‥リトル年代は、力はまだまだ弱いですが筋肉の伸張性が強く、その結果関節が動きやすく、成人より柔軟性は高いのが一般的です。
・腱(けん)‥腱や靭帯の損傷は比較的少なく、腱や靭帯が骨にくっつく部分での骨のはがれ(剥離[はくり]骨折)や炎症が多く見られます。
●ヒザ関節の構造【図B】
・半月板‥大腿骨(太ももの骨)と下腿骨(ふくらはぎの骨)の間にはさまっている三日月型の軟骨で、地面から足・下腿に受ける衝撃を吸収し、体幹に伝わる力を和らげるクッションの働きをします。さらにヒザ関節のずれを防いだり、滑りをよくするパッキングのような働きをします。
・十字靭(じん)帯=大腿骨と下腿骨をつなげる関節内の靭帯。漢字の十の字のようにクロスして前と後ろが重なり、ヒザ関節の前後左右各方向のずれ、ねじれを支えています。
・側副靭帯‥大腿骨と下腿骨とをヒザの内外側でつなぐ靭帯で、主として下腿の内側外側のぶれを支えています。 ・腺蓋(しつがい)靭帯=膝蓋骨(膝のおさら)の下から下腿骨までつなぐ靭帯で、ヒザ関節を伸展(ける動作)するときに、大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)の力を下腿まで伝達する働きをします。
・関節軟骨‥大腿骨と下腿骨の間で半月板をはさんで、軟骨が滑りあう構造となっています。
【リトルリーガーに起こるケガ】
(1)オスグッド病
ジャンプ、ダッシュ、ランニングにより太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)のひっぱる力が膝蓋靭帯の下腿骨付着部(脛骨結節)に伝わります。練習量が増えストレス過剰になると骨の剥離や炎症、突出とともに痛みを発現します。10から15歳の男子に多く発症し、外傷性骨化障害と考えられています。
・症状‥脛骨粗面の突出、圧痛、運動痛
・診断‥所見、レントゲンで骨の突出、骨片の確認
・治療‥安静、ストレッチング、理学療法、テーピング、装具、投薬
(2)ラルセン病
オスグッド病と同じ原因により、膝蓋骨下端部に疼痛、変形、石灰化、炎症を起こしたものを言います。
・症状‥膝蓋骨下端の突出、圧痛、運動痛
・診断‥所見、レントゲンで膝蓋骨下端の突出、骨棘、石灰化の確認
・治療=安静、ストレッチング、理学療法、テーピング、装具、投薬
(3)ジャンパー膝
オスグッド病と同じ原因により、膝蓋靭帯に疼痛、腫脹、炎症を起こしたものをいいます。
・症状‥腫蓋靭帯部の腫れ、熱感、圧痛、運動痛
・診断‥所見、MRI(核磁気共鳴断層撮影)
・治療‥安静、ストレッチング、理学療法、テーピング、装具、投薬
(4)半月板損傷
大腿骨と下腿骨の間に異常なねじれストレスや圧迫ストレスがかかると、半月板の軟骨の繊維が断裂し、滑らかな関節運動を妨げることになります。したがって、ジャンプやひねり動作が多い種目での損傷が多く、関節内の出血、可動域制限、疼痛、異音、ひっかかり感などとともに、膝関節のすきまの部分に運動痛、圧痛が認められます。とくに若年時には、円板状半月板といって半月板が大きく、厚いために傷がつきやすいことがあります。
・症状‥運動痛、運動(伸展)制限、ひっか かり感
・診断‥所見、MRI、造影レントゲン、内視鏡
・治療‥安静・固定、投薬、理学療法、テーピング、手術
(5)分裂膝蓋骨
膝蓋骨が2つまたはそれ以上に分かれ、成長期の運動または外力などにより痛みが出たものです。膝蓋骨外側に疼痛が出現することが多く、成因として外傷説(骨折により分離)・骨軟骨炎説(骨軟骨の炎症により分離)・疲労骨折説(繰り返しのストレスにより分離)・骨化核末癒合説(成長過程で分離)などありますが、まだはっきり究明されていません。中学、高校生の男子に多く見られます。
・症状‥膝蓋骨部の突出、圧痛、運動痛
・診断‥所見、レントゲン、CT(コンピューター断層撮影)
・治療‥安静、ストレッチング、理学療法、テーピング、装具、投薬、手術。
(6)離断性骨軟骨炎
各関節において、その関節を構成する関節軟骨の一部が母床より剥離してくる病変で、外傷説・血行障害説・骨端異常視・遺伝説などが原因として考えられます。ヒザ関節の場合、大腿骨の内側部に多く認められ、15から20歳で発症し、男性に多いといわれています。
・症状‥圧痛、運動痛、ひっかかり感
・診断‥所見、レントゲン、CT、MRI
・治療‥早期発見、安静・固定、免荷、装具、リハビリ、手術
・その他‥野球選手の場合、ヒジ関節に多発します。早期発見により適切な早期治療が大原則です。もし離断性骨軟骨炎がはがれ落ちた場合(関節内遊離体)、そのあとの遊離体の早期の処置が、関節の変形を予防するのに大変重要です。オーバーユースに対する休息も大事といわれています
(7)骨折・軟骨損傷
成長期の小児に見られるヒザ関節の骨折は、骨端部から骨端線の損傷を合併することが多く、後遺症として骨端線早期閉鎖や成長障害、骨端緑の転位やすべリによる変形、壊死、偽関節を起こしやすいため、成人とはまた違った注意が必要になります。
・症状‥腫脹、運動痛、圧痛、異常可動性
・診断‥所見、レントゲン、CT、MRI
・治療‥保存療法(ギプス、副木、装具など)、手術療法
【これだけは避けなければならない状態】
(1)オスグッド病
剥離した骨片が遺残すると、疼痛の再発や慢性化の可能性が高くなります。
(2)ラルセン病
膝蓋骨下端の変形、骨片、石灰化などが残る前に休ませ、慢性化しないようにします。
(3)ジャンパー膝
炎症が慢性化し腫れが残ると疼痛が持続し、靭帯断裂の可能性も出てきます。
(4)半月板損傷
放置すると疼痛が悪化し、関節炎を併発します。重症だと水がたまり、半月板が切れて関節内で動き回り、ヒザが動かなくなるロッキング症状が起こることもあります。さらに長期化すれば、変形性関節症が起こります。
(5)分裂膝蓋骨
分裂部の不安定性が残ると疼痛発現率が高くなります。
(6)離断性骨軟骨炎
軟骨がはがれ落ちると、関節遊離体を発生します。関節軟骨に凹凸が残れば、変形性ヒザ関節症の可能性が高まります。
(7)骨折・軟骨損傷
損傷した骨や軟骨の破片が関節内に残り関節を変形させることがあります。また骨折前と違った形に骨がくっつく変形治癒状態や骨がくっつかないままの偽関節状態、骨の血行障害による骨壊死状態などが起これば、将来的に機能障害が発症する可能性が高くなります。
次回は、ヒザのケガが起きてしまうメカニズムについてお話ししましょう。
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