>>バックナンバー


vol.9 腰はからだのカナメ

その2
★ケガ・故障のメカニズムを知ろう

講師…鵜飼健志 五ヶ丘整形外科 運動療法センター

 腰痛はヒトの宿命とよくいわれます。ヒトの背骨は、積み木を積み上げたように不安定です。そして腰は、上半身の重みを全部支えているので負担がかかります。さらにスポーツでは、日常生活よりも大きなストレスがかかるため、腰痛になる危険性が高くなります。私が以前所属していたプロ野球チームで、一番多かったケガがこの『腰痛』でした。でも、同じように練習していても腰が痛くなる人と痛くなたらない人がいます。この違いに何か腰痛対策のヒントが隠されているかもしれません。ここでは、腰痛が起こるメカニズムと、簡単なチェック方法について説明します。

【腰痛の発生メカニズム】

●なぜ腰は痛くなるの?
 まず、関節がなぜ痛くなるのか考えましょう。モれは開節が不安定になり、関節に過剰(かじょう)な動きが起こってしまうからです。関節に無理な動きが起こると、筋肉や靭帯(じんたい)など関節を安定させるものが無理な動きを止めようとするので、負担がかかります。その負担を痛みのセンサーが感知して「痛い!」と感じるわけです。腰などの背骨も、関節でつながっています。後ろには椎間関節(ついかんかんせつ)と呼ばれる左右一対の関節、前に堆間板(ついかんばん)と呼ばれる繊維軟骨(せんいなんこつ)があります。とくに椎間関節やその周りの筋肉には、痛みを感知するセンサーが多くあるので、腰痛のおもな原因になります(図1)。

●腰が不安定になるのはなぜ?
 図2のように、腰は胸郭(きょうかく)と骨盤(こつばん)との間にあります。身体を前屈したり、後屈したりする場合は、腰だけでなく胸郭も前に曲がったり、後ろに反ったりします。また、背骨をのせている骨盤も前傾(ぜんけい=前に傾くこと)や後傾(こうけい=後ろに傾くこと)をしています(図3)。そのため、胸郭や骨盤の動きが小さくなってしまったときには、間に挟まれる腰で大きく動かなければならなくなるため、不安定になってしまうのです。原因のもう一つは、腰を安定させる筋肉そのものが弱ってしまっている場合です。

●胸郭や骨盤の動きが少なくなるのはなぜ?
 2つのパターンが考えられます。一つは動かしたり支えたりする筋肉が弱いこと、もう一つは柔軟性が悪いことです。胸郭の動きが悪い代表例として、猫背(ねこぜ)があります。背筋(はいきん)が弱かったり、背筋を使わない生活習慣などが原因です。猫背では身体をひねることがむずかしくなります。背すじを伸ばした状態と猫背の状態で、身体のひねりやすさを比ペてみてください。

 骨盤の動きを小さくする代表例としては、股関節をまたぐ筋肉の硬さがあります。股関節の後ろをまたくハムストリングス(ももの裏の筋肉)や殿筋肉(でんきん=お尻の筋肉)などが短いと、身体を前屈するときに骨盤の前傾を止めてしまい、腰だけで大きく曲がってしまいます(図4)。逆に股関節の前をまたぐ腸腰筋(ちょうようきん=股関節の前にある筋肉)や大腿直筋(だいたいちょっきん=ももの前の筋肉)などが短いと、身体を後屈するときに骨盤の後傾を止めてしまい、腰だけで大きく反ってしまいます(図5)。

●腰を安定させる筋肉って何?
 腰を安定させる筋肉の弱さは、腰痛の原因となります。たとえば、背筋が弱い人は腰痛になりやすいという報告があります。背筋の中でも一つ一つの腰椎をつなぐ多裂鹿(たれつきん)が重要です(図6)。また、腰痛予防のための腹筋強化の重要性はよく知られています。その中でも腹横筋(ふくおうきん)や腹斜筋群(ふくしゃきんくん)などの深部腹筋が重要だといわれています(図7)。これらはコルセットのように背中からお腹までを取り巻いており、腹圧を高め腰を安定させるのに役立っています。これらの筋肉が弱くなった場合、腹庄が低下し、腰部の安定性は悪くなります。

【姿勢や動作のチェック方法】

●立った姿勢の確認
 立った状態での骨盤の傾きを確認して下さい。正しい位置は両側の上前腹骨棘(じょうぜんちょうこつきょく=骨盤の前上にある骨の出っ張り)と恥骨(ちこつ)が横から見て垂直に並んでいる状態です(図8左)。股関節の前をまたく筋肉が硬ければ前傾に、股関節の後ろをまたく筋肉が硬ければ後傾になります。また、殿筋が弱い場合も骨盤を後傾させることがあります。その場合には、多くはヒザが少し曲がっていて、殿筋は績んだままになっています(図8右)。正しい『構え』の姿勢(図9左)をとらせてみて、できなければ殿筋が弱っています(図9右)。猫背もチェックして下さい。

●前屈・後屈での確認
 腰痛では、ある特定の動きで痛みを感じることがよくあります。例えば、身体の前屈で痛い場合や後屈で痛い場合などです。前屈したときの骨盤前傾不足や、後屈した時の骨盤後傾不足だと、腰痛になる可能性が高いので注意が必要です。骨盤前傾不足(図4左)では、殿筋やハムストリングスが短くなっています。また、骨盤後傾不足(図5左)では、腹腰筋や大腿直筋などが短くなっています。十分にストレッチングを行って、柔軟性を高めて下さい。実際にどの筋が硬くなっているかの確認方法は、図10を参考にして下さい。

●身体が硬い場合はどうしたらいいの?
 腰痛の原因には、股関節周囲や胸郭などの柔軟性低下が大きく影響していることは理解できたと思います。これらの筋肉が硬くならないように、朝や運動前後、風呂上がりなどに十分ストレッチングや柔軟体操を行う習慣をつけてください。あるベテランのプロ野球選手は、ハードな練習で硬くなりやすいからだを、いつもしっかりストレッチングしていました。少しでも長く現役生活を続けたかった彼は「僕は3年後の自分のためのストレッチングを今しているんだ」と言いながら、じっくり時間をかけて行っていました。

 皆さんの年代は一気に身長(骨)が伸びるため、筋肉の長さが足りなくなり、からだが硬くなります。この時期にストレッチンクを十分行って、骨の伸びに筋肉の伸びを追いつかせる必要かあります。皆さんはこれから何十年もプレーする可能性があるわけですから、プロ野球選手以上に体調には気をつける必要があるといえます。

●筋力が弱い場合にはとうしたらいいの?
 まずは、自分のからだを十分にコントロールできるようになる必要があります。いきなり重いものを背負ったりせず、正しい姿勢で自分の体重を十分支えられるように脚(あし)・腰・腹筋・背筋を強化して下さい。

 腰痛で来院する子どもの多くは、姿勢が悪く声が小さいという印象があります。ふだんから、ちゃんと大きな声で挨拶や受け答えをするのは、深部腹筋を鍛えることになります。また、姿勢を正すよう心がけることは背筋や殿筋を鍛えることになります。トレーニングだと思って、実施してみて下さい。

●とんなプレーで痛みが起こるの?
 最後に、野球のどんな動きで腰痛を起こすのか紹介します。図11の悪い例(×)のようにならないよう、腰の反りすぎ、曲げすぎ、ひねりすぎに気をつけ、股関節の動きを意識してプレーして下さい。

「その3★コンディショニング」へ



[TOP]
Copyright (C) JAPAN LITTLE LEAGUE. All Rights Reserved.