vol.10 肩とヒジは、弓のようにしなやかに
前回の「腰」に引き続き、今回は「肩・ヒジ」について、まとめて学んでいきましょう。
その1★知っておきたい肩・ヒジの仕組みと、起こしやすいケガ・故障
講師…杉本勝正 名鉄病院整形外科
投球動作は、人間以外の動物ではほとんどできない高等なわざです。ですから、ちょっとバランスを崩しただけでも、いろいろなところに障害が発生したりします。野球をする上で、障害を少なくし予防するために知っておきたい肩、ヒジの仕組みや言葉を理解しましょう。
【知っておきたい肩の仕組み】
<1>肩甲骨、上腕骨(図1)
肩を作っている骨です。肩甲骨は腕の受け皿で、上腕骨は腕の骨です。
<2>腱板(インナーマツスル)(図2)
肩関節を安定させる筋肉です。4つの筋肉(棘上筋・きょくじょうきん、肩甲下筋、棘下筋・きょくかきん、小円筋)で構成されています。投げるときに腱板の機能が低下していると、肩のいろいろなところに痛みや障害を引き起こします。
<3>アウターマツスル(図2)
肩の表面に近い筋肉(三角筋、広背筋、僧帽筋)です。重いものを持ち上げたりするときに、おもに働きます。
<4>関節唇(図3)
肩の受け皿(関節窩)の周囲にあり、肩関節を安定させるために重要です。バランスの悪い投球をくり返すと傷みます。
<5>骨端線(図1)
骨が成長するところで、小学生の年代では弱いので、投球するときの力で傷みます。
<6>0ポジション(図4)
肩が一番安定するといわれているポジションです。力まずに万歳したときに挙げた腕の位置が近いです。インナーマッスルとアウターマッスルが、無理のない形で作用するといわれています。このポジションを投球時にも利用すると、安定した投球ができるといわれています。
<7>後方拘縮
肩後方の関節包や筋肉が硬くなる現象です。投球障害を引き起こしやすくなります。
【知っておきたい成長期の肩の障害とケガ】
<1>動揺肩(Loose shoulder)
成長期に多く見られます。肩が不安定となり、投球するといろいろなところに痛みを生じます。腱板(インナーマッスル)の機能が落ちていたり、姿勢が悪いととくにひどくなります。腱板訓練を主体に安定化するようなリハビリを行います(図5)。
<2>腱板炎、腱板損傷
バランス悪く投げ過ぎたり、肩を打ったりしたときに生じます。痛みがあるときは、あまり投げないようにします。その間、腱板訓練主体のリハビリを行います。
<3>リトルリーグ肩
上腕骨の骨端線が損傷される、成長期特有の障害です。長期の経過観察が必要です。投球再開のメドは、ストレスで痛みが生じなくなったときです。
<4>関節唇損傷(SLAP病変)
成長期にはあまりみられませんが、関節唇が傷む障害です。引っ掛かるような症状があるときは投球禁止し、MRIなどの検査をします。
<5>後方拘縮
投球時にゼロポジションをとりづらくさせ、障害を引き起こしやすくします。ストレッチをして筋肉のバランスをよくします。
【知っておきたいヒジの仕組み】
<1>ネズミ(関節遊離体)
関節の表面は軟骨でおおわれています。その一部が分離して関節の中をちょろちょろ動きまわるので、関節ネズミともいいます。
<2>内側側副靭帯(図6)
投げるときに引っぱられる靭帯で、ヒジの内側(小指側)にあります。
<3>肘頭(図6)
ヒジの後ろ側にある、出っ張った部分です。ボールを投げるときにストレスがかかります。
<4>尺骨、撓骨(図6)
ヒジは腕の骨、上腕骨と前腕の骨である小指側の尺骨と、親指側の摸骨から構成されています。
【知っておきたい成長期のヒジの障害とケガ】
<1>内側型野球肘(図7)
ヒジの内側には骨端線、内側側副靭帯、手指を曲げる筋肉(回内屈群)が存在し、これらの損傷を内側型野球肘といいます。治療は、安静とヒジ周囲の筋肉トレーニング、ストレッチなどです。
<2>外側型野球肘(離断性骨軟骨炎・図8)
ヒジの外側(親指側)は、投球により圧迫力が加わり、軟骨が傷みます。少し傷んだものから完全にはがれたものまで、程度はいろいろです。軟骨がはがれそうになったり、はがれてしまったときには、手術が必要となります。まだレントゲンで黒っぽく抜けているだけの場合は、安静でよくなります。
<3>後方型野球肘(図9)
肘頭の先端が衝突して痛みを感じたり、骨端線を傷めたりする場合に、後方型野球肘といいます。安静にしていても治らない場合は、手術で肘頭の先を削ったり、骨端線損傷の場合には安定させる手術をします。
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