プロ野球チーム主催の野球教室とは

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記事の目次

お子さんを少年野球チームに預けているジャイアンツファンの貴方。
喜んでください。あの読売ジャイアンツから連絡があり、球団主催で野球教室を開いてくれるとのことです。これで、お子さんの将来にジャイアンツ入団という道が開けたのでしょうか。

では、少年野球における“プロ野球チーム主催の野球教室”というのは、どういうイベントで、どのような内容なのかを説明していきましょう。

野球教室とは

プロ野球チームが主催する野球教室には、大きく2種類あります。ひとつはチーム主催で月謝を取って本格的に“お稽古”として開く“アカデミー”活動、もうひとつはボランティアとして各地区順番にコーチ陣を派遣するような“無料野球教室”活動です。

アカデミー活動とは

アカデミーを開いているチームは全国にありますが、首都圏に本拠地を置くチームとしては5チームあります。読売ジャイアンツ東京ヤクルトスワローズ横浜 DeNAベイスターズ千葉ロッテマリーンズ埼玉西武ライオンズは、それぞれ年間を通して子どもたちに野球を指導する野球スクールを開いています。

ジャイアンツの例で説明すると、長嶋さんが名誉校長で、コーチ経験者と選手OBに加え、教員資格を持った硬式野球/ソフトボール経験者などを指導陣として揃えています。ジャイアンツアカデミーの生徒として対象になるのは、5歳から12歳までの子どもで、幼児コース(5/6歳)、小学1/2年生コース、小学3/4年生コース、小学5/6年生コースの4コースに分けて指導を行います。発育発達に合わせて学年ごとにコース分けをして、少人数制で個別の指導も行っており、月謝さえ払えば初心者や女の子でも参加できます。

各チームのアカデミーは、それぞれ“プログラムメソッド”と呼ばれる指導要領を持っていて、それに則って指導が進められます。
我々のようなボランティアとは違って、月謝をとる“お稽古事”であり“ビジネス”なので、ある程度責任を持って指導してくれるところがアカデミーの長所です。
但し、地域のチームに入りながらアカデミーに通うのは避けたほうが無難です。

まず、“目的”が違います。そして“指導方法”が違います。
地域のチームでは、それぞれ“今年の目標”を立てて、それを目指してチーム一丸となって一試合一試合勝利を目指します。そして、“その目標達成の手段”として厳しい練習を課していきます。

ところが、アカデミーにおいては、月謝に見合う“成果”を短期的で出さなければならないため、チームが勝つとかチームワークとかは二の次で、“速い球を投げる”“ヒットをたくさん打つ”“守備が巧くなる”というようなことが至上命題となります。その為、アカデミーのコーチ陣が、投球フォームや打撃スイングなどのあちこちをいじくり回します。子供は地域チームにおける監督・コーチの教えと、アカデミーにおけるコーチの指導の狭間に置かれて、訳が解らなくなります

このため、私のチームでは“アカデミー参加は禁止”の通達を出しています。要するに“どうしてもアカデミーに参加したい場合は、チームを辞めてから参加してください”ということです。これは、私がボランティアで汗しているから、悔しくて意地悪をしているのではありません。困るのは子供で、“時間の無駄”どころかお互いの組織のためにならないので、無意味なダブル登録はやめてください、と言っているのです。

アカデミーには、単なる野球教室という姿に留まらず、実は二義的な目的があります。
プロ野球12球団は、2005年から各球団で小学生チームを 編成し、年末の12月に一堂に会する軟式野球大会を行っています。“この大会に参加する各球団のジュニアチーム(“ジャイアンツ・ジュニア”“スワローズ・ジュニア”等)編成の為に、優秀な選手を発掘する“というのが、アカデミーの隠れた狙いです。アカデミーで幼少期から目をつけ、自軍のジュニアチームのために“青田買い”のようなことをしているわけです。

無料野球教室とは

一方、無料野球教室の方は、どうでしょうか?
まず、上記のアカデミーの事務局が各地域の本部に対して、“うちのアカデミーのコーチ陣が無料野球教室をやりますが、日程はいつがよろしいでしょうか?”というような、“開催ありき”の打診があり、大抵の地域本部は喜び勇んで日程を組み、“野球教室をやっていただく”ことになります。但し、“バッティングやピッチングの基本を教えてくれる”といっても、個別の指導はほとんど受けられません。開催時間は大抵、午後の3時間くらいですからそんな時間はありません。したがって、素質のありそうな子に限ってコーチから声をかけられ、個別指導の“さわり”が実践されます。しかし、佳境にさしかかったところで計ったように時間切れとなります。その後、無料野球教室のおわりにアカデミーのパンフレットが配られ、“元プロ野球選手を揃えた当アカデミーのコーチ陣から指導を受けて、君もプロ野球選手になろう!”というような宣伝活動で毎回終わるので、親御さんの気持ちは大いに揺れ動きます。

要するに、これは“アカデミーを宣伝する活動の一環”という訳です。
私が見る限りにおいて、この無料野球教室は、その日の参加資格として“年齢を指定”してくることが多くなっています。“その時期にアカデミーに空きが出ている学年に狙いを定めて招致活動を行っている”というのは、あながち穿った見方ではないはずです。

まとめ

高いお金を払って野球が巧くなるのであれば、お金持ちの子はみんな野球が巧いことになりますね。
また、いくら速い球が投げられても、いくらスイングスピードが速くても、チームメートと仲良く野球が出来なければ、少年野球チームに在籍する意味はないと思います。野球人として大成すると思えないし、本当の意味での野球の楽しさに接する機会を見逃す危険すらあります。

無料野球教室との関わり方については、”元プロ野球選手を見に行こう”というくらいのノリで、深入りしないことを小欄ではおすすめしておきます。

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