ランナーコーチの基本的な役割について

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野球の公式戦で、ランナーコーチは欠かせません。
二名のランナーコーチが正規のコーチャーズボックスにいることを確認してから、主審はプレイを宣言することになっているほどです。(実際には試合時間短縮の為、ランナーコーチが出ていなくてもプレイを宣言することがあります)

ちびっ子の大会では、大人であるコーチがその役を担うことを許されている大会もありますが、基本的には子供たちの中からランナーコーチは選ばれます。
その為、人数の少ないチームにおいては全員に役が回ってくる可能性があり、ランナーコーチの練習を全員で行っているチームもあります。
しかし、本来ランナーコーチには特殊な役割があり、誰でも出来るという類の仕事ではありません。

では、ランナーコーチの基本的な役割についてお話しましょう。

アウトカウントをランナーに認識させる

ヒットやエラー、フォアボールなどでランナーとして出塁した場合、まずアウトカウント(ボールカウント)が重要になります。
ところが、プロ野球の球場と違いカウントが球場内に表示されることのほとんどない少年野球の球場においては、ランナーコーチが声に出すことでランナーとカウントを確認します。

実際、小学生は本当によくカウントを間違えます。
ツーアウトであれば打球の方向を見ないでとにかく走ることが求められるし、ワンアウト、ノーアウトであれば打球を見て状況判断しないといけないので、アウトカウントを間違えるということは、試合の中における“致命的なミス”となります。
さらに、これに加えてボールカウントがツースリーであったりすると、ツーアウトであればピッチャーが投げた瞬間にスタートとなるし、ノーアウト・ワンアウトであればヒット・エンドランの可能性も高まり、その準備もしなければなりません。
たとえ小学生といえども、“アウトカウントの重要性”を理解しなければ、自身が次に成すべきプレイの方向が見えてこないのです。

その他、カウントによってはスクイズを決行する場面があったり、ゴロゴー(ゴロの場合のみ次の塁へゴーするという作戦)か、ギャンブルスタート(ノーアウト、またはワンアウトで走者が三塁にいる時、内野ゴロでも本塁セーフになるため、バットに当たったら迷わず本塁に突入するという作戦)かなど、サインプレーの可能性も確認する必要が生じます。

このような重要なファクターであるアウトカウントをランナーに確認することが、ランナーコーチの重要な役割となります。

ランナーに対して次の塁を狙うかどうかの指示を出す

ランナーは基本、走ることに集中するので、打球を見ながら走ると確実にスピードが落ちます。
その上、小学生、特にちびっ子に対して、「走る」と「打球を確認する」を一度に要求することは至難の業です。

そこで、ランナーコーチの出番です。ランナーコーチは、打球の勢い・方向・キャッチされそうかどうかを見ながら、次の塁を狙うのか、ストップするのかをランナーに指示します。
1塁ランナーコーチは、バッターランナーが2塁へ行くべきかどうか、3塁ランナーコーチは、ランナーが本塁へ突入すべきかどうかを、それぞれ迅速に指示する必要があります。

ベンチからのサインや指示を確認させる

これは小学生にはなかなかできませんが、ランナーがベンチからのサインを見ていない時でそれに気づいた場合、ランナーにサインを見るよう教えてあげるというのも、ランナーコーチの重要な役割の1つです。
3塁ランナーがスクイズのサインを見ていなかったら、勝てる試合も勝てませんから。

特にベンチからグラウンドまでの距離が遠い時や、球場全体が熱気に包まれてうるさい時、ベンチからの指示に気づかないことが多々あります。
そんな時に、ランナーコーチが声の中継をしてあげるということは、少年野球において非常に重要です。

ランナーコーチもチームの1員

小学生チームの場合、コーチャーズボックスに立っている選手はレギュラーで出ている選手よりも判断力が劣っていたり、野球のルールすらあまりよく知らないというケースが多いかもしれません。
そういう場合は、初級編としてここまで紹介した役割のうち、どれかひとつでもきちんと教えてあげることからはじめましょう。

野球におけるランナーコーチの役割とその重要性、特に3塁コーチの重要性はかなり大きいので、そういう点をきちんと理解させて、試合における“参加意識”を高めてください。
ある意味レギュラーよりも大事な役割を任せている…ということを伝えられれば、その子のモチベーションには大きな違いが出てくることでしょう。

次に、中級編として1塁コーチ・3塁コーチ個別の役割を見ていきましょう。

1塁コーチの役割

プロ野球や高校野球を観ていると、バッターランナーが1塁へ駆けこむ際に、よく1塁コーチが「セーフ」のジェスチャーをやっています。
あれは役割ではないですし、はっきり言ってさほど効果はありません。逆に1塁塁審の心証を悪くする恐れすらあります。

1塁ベースコーチャーの役割で重要なのは、「ランナーへの指示」と「ボールポジションの確認」です。

「ランナーへの指示」は、バッターが打った打球方向や、野手の捕球位置・体勢等を判断し、次の塁(2塁)を狙うべきか止まるべきかを瞬時に指示します。
その他、ピッチャーの牽制球を1塁ランナーに教えたり、リードの幅を指示したりもします。これはランナーに対して「ゴー」「バック」という掛け声で直接的に行います。

「ボールポジションの確認」は、隠し玉にひっかからない為と、次の塁への積極的な走塁を促すためにも、“誰が”ボールを“どういう”状態で持っているかを常に確認します。
牽制球のとき、ファーストはすぐにピッチャーに返球することが多いですが、小学生の場合そのまま持っていて、1塁ランナーが再びリードするのをじっと待っていることがあります。
そして、ボーっとして1塁を離れたランナーが結構アウトになります。そういう時は「ファースト、まだボール持ってる!」とランナーに対して大声で警鐘を鳴らします。

3塁コーチの役割

2塁から3塁に走ってくるランナーは、みなホームインを狙って突進して来ます。3塁コーチの技術としては、その突進してくるランナーを“止める”技術がまず重要です。
その止め方にも色々あります。

  • オーバーランをさせてから止める。
  • ベース上でゆっくり止める。
  • スライディングさせる。(中央へ、右側へ、左側へ滑らせる)

まず、走ってくるランナーを確実に止めることをマスターし、その後、手を回す(走らせる)ことを段階的に覚えていくとよいと思います。
止めるタイミングをマスターすることで、様々な迷いの範囲が限定されてくるからです。その結果、最終的にどこで回せばよいか(走らせればよいか)のタイミングが、掴めて来るのです。

次に覚えるべき技術は“迷ったら止める”ということです。
野球の試合において、ランナーが3塁まで来ることはそうそうありません。時には1度もないまま試合が終わることすらあります。
そんなチャンスを“ホームにおける憤死”で失うのは、単なるアウトカウントが1つ増えるだけでなくゲームの流れを止めてしまい、最終的に勝ち星を逃すことに繋がります。
ランナーコーチが止めておきさえすれば、流れを断ち切らずにまだ次の攻撃に勝負をかけることが出来るのです。
3塁コーチとして最もまずいのは、自身の判断を躊躇することです。
この状態では、ゴーなのかストップなのかのジェスチャーが遅れ、ランナーのスピード自体が落ちてしまいます。繰り返しになりますが、だから“迷ったら止める”のです。

3塁コーチのポジショニング(立つ位置)も重要です。
1塁走者が、3塁に進入する場合は、コーチャーズボックスのレフト側に立ち、大きなアクションで判断を示します。まずランナーの視界に入ることが重要だからです。
2塁ランナーがいる場合は、2通りあり、コーチャーズボックスのレフト側に立ち、ランナーとともに、ホーム方向に動きながら判断を出す方法。もうひとつはホームベースよりに立ち、その場から、大きく動かずに走者に判断を出す方法です。
ここでは、3塁コーチとして自分が判断しやすい位置を掴む事が重要だという事を押さえておいてください。

3塁からのタッチアップにも備える必要があります。
事前に走者と確認し外野の守備位置と肩、ランナーの走力を総合的に判断することが必要です。

また、3塁にも牽制球が来ます。相手投手の牽制球についてクセをつかむことが必要です。
特に、ランナー3塁の場合は、ボークすれすれの牽制を仕掛けてくる投手がいるので、ランナーにそのくせを的確に伝えることです。

その他、ランナー2人に指示を出す場合もあります。
3塁ランナーを指示しながら、後続の2塁ランナーに対しても瞬時に切り替えて、指示をだす必要があるかもしれません。
要注意なのはランナー1塁で、ライト前ヒットのケース。1塁ランナーが3塁進塁を狙う場面です。
ここでは、走者に対して早めに3塁コーチが判断を出さないと、仮にストップの場合、オーバーランでアウトになってしまうケースがままあるからです。“2塁ベースを回ってすぐに走者は止まれない”ので要注意です。
こうして、アウトカウントに応じて1アウトならば慎重に、2アウトならば、大胆に回してホームに突っ込ませるなど、打順や回数、得点差によって3塁コーチャーとして的確な指示が出せるようになっていきます。

まとめ

年に何試合か「今日は3塁コーチのXX君のお陰で勝ったな。」と私がコメントする試合があります。
そんな試合の全体ミーティングの最中、XX君の目はキラキラと輝いています。
彼はランナーコーチをやることで、“貢献する喜び”を知りました。

これも、野球を通じて子供たちに感じてもらいたい経験のひとつなのです。

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